神器ペッツ


幼少時代
写真
↑大台ヶ原の山々。

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これは自分が小学校に上がる前の頃のお話です。

自分が子供の頃は、まだ街中に駄菓子屋が普通にある時代でした。自分を含めた子供たちは毎日、近所の駄菓子屋で10円とか20円のお菓子を買ってオヤツに食べていたワケです。

その日、いつもと同じように駄菓子屋でおやつに食べるお菓子を物色していたら、とんでもないものを発見してしまいました。

それは細長い筒に動物の顔がついており、その熊の顔をしたボタンを押すと、ラムネがピュッ!と出てくるというモノ。

まさか無限に出てくる!? いやそんなワケないよね。でも中のラムネを詰め替えれば何度でも使えちゃう!?

これはなんというマジックアイテム。まさに神器。

欲しい・・。 超・絶・的に・欲しい!

でもこんなスゴイモノいったいいくらお金を貯めれば買えるのか?

・・1800円?

自分はその当時、まだお小遣いというモノをもらっていなくて、お金を得る手段としてはお買い物のお使いに行って、お駄賃の10円をもらうしかありませんでした。

100円なら10回もお使いに行けば簡単に買えてしまいます。そうではなくて、かなり大変だけど決して不可能ではない金額。それが子供ながらに考えた1800円という大金でした。それぐらいお金を貯めればなんとか買えるのではないかという希望でもあったと思います。

それからは風の強い日も、雨の日も毎日のようにお使いに行きました。買い物がない日も、無理にでもなにか買うモノを考えてもらってお使いに行きました。一日に何度でも行きました。

いま考えれば買ってもらえるように親に頼めば良かったのではないかとも思いますが、あの頃は1800円もの高いものをまさか親に買ってもらうなんて考えたことさえもなかったですし、この神器ペッツは自分で一生懸命貯めたお金で買うのだ!という子供ながらに明確な強い気持ちがあったのかもしれません。

でもお使いもたまには50円のアイスを家族分買ってきてもよい日もあったりして、うれしい日もありました。また、このお使い自体もイヤイヤやっていたわけではないです。

だって神器ペッツを買う為ですから!

そうして半年が過ぎた頃、1200円ほどが貯まりました。10円のお駄賃で1200円もの金額を貯めたワケです。

目標金額の1800円にはまだ届いていないけれど、ひょっとしたら買えるかもしれない。いや買えないだろうけれど、一体いくらまで貯めれば買えるのか正確な値段が知りたかった。

それで必死に貯めた1200円を持って駄菓子屋のお店に向かいました。気分はまるで大金の入ったスーツケースを持って、世界に一つしかないダイヤモンドを買いに行くかのような気分です。

もしかしたら神器ペッツはもう売り切れてしまっているんじゃないだろうか?。そうしたら今までの努力がすべて水の泡だ。そんな不安を胸に抱きながら足速にお店に向かいました。

神器ペッツはまだお店にありました。お店の人にいくらなのか尋ねてみると、

120円です。

という答えが返ってきました。

まさか?そんなハズはないと思って、もう一度聞き直しました。でも120円という答えが返ってきます。

この神器ペッツが120円!?

・・・。

なんということだ!!

この時代にバイキングの小峠が生きていたら間違いなくこう言ったでしょう。

なんということだ!! なんということだ!! なんということだ!!

やっと買える!といううれしさと、まさかこんなに安いとは!という釈然としない思いが入り混じって複雑な気持ちになりました。

神器ペッツを買って駄菓子屋を出た後、河原に行ってボタンを押してみました。

ラムネがピュッ!と出てきます。

お~! スゲー!

ボタンを押すとラムネが出てくるなんてスゴすぎです!

よしっもう一度。あっでもラムネがもったいないからどうしようかな~。えいっ押しちゃえ。

ラムネがピュッ!と出てきます。

お~! スゲー! ラ・リ・ホ~♪。

この神器ペッツが欲しくて半年間一生懸命頑張ってきたのです。そりゃぁ~テンションも上がっちゃいます。

その後、友達にも見せて自慢しました。

こうして一通り遊んだ後、ラムネがなくなったので、替えのラムネを詰めてまた遊びました。しかし、この頃にはもう、ラムネがピュッ!と飛び出すスゴさにも慣れてしまっていました。

そうです自分の中で神器ペッツはもう、ただのペッツとなってしまっていたのでした。

終わり

・・・

えっ? お後が宜しくない?

それでは

「子供には大人の世界を認知できない。大人には子供の世界をもう見ることはできない。」

な~んていう哲学的な締めくくりで。

ちゃんちゃん。※<-古っ!。